【2023年大会参加記録③】 第70回全国中学校理科教育研究会東京大会【3日目記念講演とか】

 【第70回全国中学校理科教育研究会東京大会3日目】記念講演

大会3日目は、いよいよ記念講演です! 演題は「地球環境の変遷から宇宙における第2の地球の条件を探る」。東京大学大学院理学系研究科教授の田近英一先生にお話ししていただきました。

田近先生の原点は、「液体の水が46億年もの間、なぜ安定して存在し続けられたのかその理由を知りたい」という純粋な疑問から始まったそうです。 (※なお、講演スライドの撮影やSNS等への掲載は禁止とのことですので、今回は文字と自分のメモから噛み砕いて内容をご紹介します!)

【講演のまとめ】

1. 暗い太陽のパラドックスと地球の気候維持

まずは太陽と地球の関係からお話がスタートしました。 星形成領域から核融合反応が起きて、赤色巨星や超新星爆発に至るまで、太陽は長い年月をかけて少しずつ明るさを増していく――というのはあまり知られていない事実です。推定では、太陽は1億年で約1%ずつ明るくなっているとのこと。この変化が周囲の惑星にどう影響するのか?

  • シミュレーションとの矛盾 もし過去の日射量が今の大気組成(約8割が窒素、約2割が酸素)のままだとしたら、約20億年以前の地球は「全球凍結」していたはずです。しかし実際の地質調査では、30億年以前の海水温は60°Cを超える高温環境だったことが分かっています。ここで現実とシミュレーションに大きな矛盾が生じます。

  • 二酸化炭素(CO2)の役割と自己調節機能 「過去の地球は気温が高かった。その理由はCO2がたくさんあったからではないか?」という仮説を立てると立証できそうですが、計算上は現在の100〜1000倍のCO2が必要になります。金星には大量のCO2があるため地球にもそれだけあったと考えられますが、太陽の照射が増えるにつれてCO2は減るはずでは?という疑問が残ります。 そこで導き出されたのが、「地球は気候の自己調節機能を持っている」という説です。

【気候の自己調節機能の仕組み】

  1. 火山活動でCO2が放出される

  2. 大気中の雨にCO2が溶け込み、かなり強い酸性の雨になる

  3. その酸性雨が石灰石などを溶かして風化が起きる

  4. 炭酸イオンとカルシウムイオンが反応し、炭酸カルシウムができる

  5. それが地下に固定される(もちろん植物の光合成もある)

  6. これにより大気中のCO2が減り、温室効果が調整される

  • メタンの存在と小さな微生物のパワー しかし、色々と調べていくと「二酸化炭素だけでは当時の高い気温(温室効果)を説明できない」ことが明らかになりました。そこで登場するのが、温室効果ガスとしての「メタン」の存在です。 ただ、これも現在の地球のメタン量の1000倍が必要という計算になり行き詰まりそうに思われましたが、ここで「小さな微生物のサイクルには1+1が10にもなるような爆発的な活動ができる」ことが分かってきました。つまり、メタンを作る「メタン菌」が小さな活動サイクルの中で驚異的な働きをしたのではないか、という説に行き着いたそうです。

2. 酸素と地球の歴史

過去には硫黄や鉄などを使う「非酸素型光合成生物」がいましたが、酸素を生成する「シアノバクテリア」がいつ誕生したのかは、実はまだ正確には分かっていません。

ただし、25億年前に酸素の微かな痕跡が発見されています。そして、約24億年前の地層には酸化鉄を含む層とシリカに富む層が交互に重なった「縞状鉄鉱層」が見られ、これ以降に酸素の量が増加していったことが分かっています。この酸素の増加に伴い、真核生物が発生しました。さらに、6億3000万年前にも急激に酸素が増加しています。この現象が地球環境とどう関係しているのか? 次のトピックに繋がります。

3. 全球凍結イベントと酸素の上昇の深い関係

「氷河期」の定義は、地球上に氷床が存在することです。実は今現在は南極大陸やグリーンランドに氷床があるため「氷河時代」ですが、恐竜がいた時代には氷床がなかったため、氷河時代とは呼びません。

地球の歴史上、今から約23億年前、7億年前、6.4億年前の3回、地球全体が凍りつく「全球凍結(スノーボールアース)」の時代があったことが分かっています。 その証拠として、オーストラリア大陸などが低緯度(赤道付近)にあったと推定される時代にも、大陸が凍っていた痕跡が見つかっています。

  • 全球凍結がもたらした奇跡のサイクル 地球が全球凍結すると海は凍りつきますが、海底の火山活動は継続されるため、大気中のCO2は増え続けます。 しかし水が凍っているため雨に溶け込まず、CO2が回収されません。 これにより強力な温室効果が起こり、一時は平均気温がマイナス60°Cだった地球の気温が一気にプラス60°Cへと激変する現象が起きました。 その結果、激しい風化が起こり、陸から大量の「リン」が海へ流れ出しました。これが海にいた生物の光合成を劇的に活発化させ、一気に酸素濃度を急上昇させたと考えられています。

つまり、「全球凍結」と聞くと絶望的な大災害のイメージがありますが、実は地球の生命や進化にとってなくてはならない必須のイベントだったということです。これで、急激に酸素が増えた時代と全球凍結の時代が綺麗にリンクしてきます。

4. 生命が存在できる「第2の地球」の条件とは?

生命にとって水は不可欠ですが、その水の存在は太陽の日射量によって決まります。これをハビタブルゾーン(生命居住可能領域)と呼びます。単にハビタブルゾーンに惑星があるだけでなく、以下の奇跡的な条件が揃う必要があります。

  • 適切な温室効果ガスがあり、その状態を約6億年程度保っていること

  • 継続的な火山活動があり、二酸化炭素を出し続けていること

  • 水が多すぎないこと(地球の水は全体の質量で考えるとわずか0.0023%。もしこれが10%を超えると陸地が完全に水没し、生命活動の多様性が維持できなくなってしまう!)

これらのさまざまな条件をもとに、世界中の研究者が今「地球と同じような星(第2の地球)がないか」を探しています。 講演の最後には、「果たして、地球は宇宙の中で普遍的な存在なのだろうか?」という深い問いかけが投げかけられました。


 全体を通して、「やっぱり地球は奇跡の惑星(ほし)なんだ」という感動を強く覚える講演でした。 中学3年の宇宙単元や、中学1年の火山の単元で、こうした壮大でロマンあふれるお話を授業のスパイスとして取り入れられたら最高だなと感じます!

さて、長かった3日間の全国大会ですが、本当にお腹いっぱいで充実した素晴らしいものになりました。 来年の開催地は山梨県!……さすがに、来年の事務局長はもう引退している……かな?(笑)

【第70回全国中学校理科教育研究大会記録は各内容をクリック】

1日目の会議・レセプションの様子はこちらか

2日目の文科省講演はこちらから

2日目の分科会の様子はこちらから

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1日目の旅の思い出はこちらから

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