【3日目】第72回全国中学校理科教育研究会北海道大会【全体会・学術講演・閉会式】
【大会3日目】
○全体会
全体会では、若い理科教師の集い報告、分科会報告、研究のまとめが報告されました。若い理科教師の集いは、道中理ユースネット(主に30代までの先生方を中心に、お互いに理科教員として研鑽を積んでいく目的で設立された組織)が中心となり、30代までの先生方の研修として行われました。40以上の先生や報道機関も断わり、30代までの先生方で全て行ったそうです。
○学術講演
「触れる科学でつなぐ次世代への学術研究と理科教育」
京都大学 理学研究科 物理学准教授 榎戸 輝揚 氏
榎戸先生は、北海道出身で、中学校時代に、2日目の発表にもあったように、札幌市で開催された「私たちの科学研究」で発表を行い、中学校時代はNHKでみた番組の影響で「青銅器の実験」を自由研究で行い発表さたそうです。そのような縁もあり、今回の講演につながったそうです。
主な講演内容は以下の通りでした。
(1)主な経歴
・東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻
・東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻, 修士課程
・東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻, 博士課程
・日本学術振興会, 特別研究員 DC1 (数物系科学)
・東京大学大学院 理学系研究科, 特任研究員
・米国 SLAC 国立加速器研究所(スタンフォード大学), 日本学術振興会 海外特別研究員
・NASA ゴダード宇宙飛行センター (理化学研究所), 日本学術振興会 特別研究員 SPD
・京都大学, 白眉センター (宇宙物理学教室), 特定准教授
・京都大学, 物理学・宇宙物理学専攻 物理学第二分野, 准教授
特に、海外にいた時は修業時代と考えているとのこと。現在でも、東京大学時代の仲間とはつながっており、ノーベル物理学賞を受賞した 小柴
昌俊さんを囲んだ写真の紹介もあった。
(2)全体的な研究方針・理念
・宇宙や地球の極限現象(中性子星、雷、雷雲など)の解明を目指しているのが研究内容である。
・学術クラウドファンディングやオープンサイエンスを活用し、社会と協調しながら科学を文化として捉え直している。
(3)雷雲プロジェクト(高エネルギー大気物理学の開拓)
・冬季の日本海沿岸の雷を多地点観測網で精密観測(石川県で実際に小型装置を置かせてもらい、観測)を行った。
・雷で光核反応が起こり、中性子が放出されることを世界で初めて観測できた。
・従来の電波・可視光観測に加え、市民サイエンスも活用した放射線観測を実施した。
(4)天体観測について
・ 巨大望遠鏡ではなく多数の小型装置で観測精度を高める発想を宇宙に展開。
・実際に宇宙ロケットが着地する姿を現地で目撃して、感動した。
・映画「この夏の星を見る」にも実験機が登場するなど、天体観測に関する協力をしている。
(5)中性子による月面水資源探査
・雷で発生する中性子を検出できる新型中性子モニタを開発中。
・インフラ劣化調査(配管の水分検出など)や民間企業との連携も視野に入れ、月面探査ローバーに搭載し、月面水資源探査へ応用している。
・このことは、いずれ火星にヒトが行く時の拠点基地になるときに有効と考えている。
(6)オープンサイエンス活動
・研究成果の公開だけでなく、誰もが研究に参加できる広義のオープンサイエンスを推進している。
・2016年に「京都オープンサイエンス勉強会」設立、月1回のミートアップ開催し、2020年から東京でも開催している。
・シチズンサイエンス(専門的な科学者ではない一般市民が、科学研究に主体的に参加する活動)普及を目指して活動をしている。
(7)中学校の先生に向けて
・大学で伸びる学生は、大学や学部に入る段階で「伸び代」が見えてしまい面もある。つまり、初等中等教育が極めて大事と感じている。
・個別の知識ではなく、自分で工夫して手を動かす週間、わからないことを議論する姿勢、自分という個人に対する自信(主体性)が重要になると考えている。
全体を通して、「自分の興味ある分野」へ挑戦する姿勢がとても感動しました。特に、専門である宇宙線(宇宙からの放射線)から地上に雷と宇宙線の関係に結び付け、現在もクラウドファンディングなどで新しい分野へ挑戦していることなど、大変興味深い内容でした。
榎戸 輝揚先生の専門内容などは、以下を参考ください。
榎戸輝揚の研究ウェブページ https://hackmd.io/@tenoto/B1vizpKfD
榎戸輝揚の研究資料リポジトリ https://hackmd.io/@tenoto/rJAstJRfw
Thundercloud
Project https://thdr.info/
河合塾 みらいブック
市民参加で挑む宇宙の謎雷のきっかけは宇宙線か。核反応も明らかになった雷の最新研究
榎戸輝揚先生
https://miraibook.jp/researcher/w2035s
NHK サイエンスZERO
“博士が子どもだったころ”vol.2 雷と宇宙のナゾに挑む「榎戸輝揚 博士」
https://www.nhk.jp/p/zero/ts/XK5VKV7V98/blog/bl/pkOaDjjMay/bp/pg1Xdd6Zn4/
○閉会式
閉会式前には、大会宣言審議が無事に承認さました。閉会式では、大会長挨拶や、次期奈良大会紹介、大会運営委員長挨拶などが行われ、無事大会を終えることができました。
【全体を通して】
北海道大会は、DX化により、効率化などを進めていました。特にポータルサイトを設置し、全体資料や、各分科会資料なども掲載、発表者へ質問などができなかったことなどは質問フォームで集約し、後日回答を掲載するなど、様々な工夫が見られました。また、3日目には前日までのまとめを掲載するなど、デジタルの特性を活かした活動がされていました。
合わせて、上記にも記載しましたが、若手の会が自主的・主体的に活動を行っており、7年から8年に1回行われる北海道大会のノウハウを若手が吸収し、育っているというのを実感しました。
どの内容もレベルが高く、大変勉強になるものばかりでした。
次回の奈良大会は、令和8年8月9日(日)~11日(火)です。またそこでお会いしましょう。
*本大会は、撮影、録音、録画が関係者以外の場面以外は不可ということだったため、記録があまり残っておりません。メモや大会誌を参考に文字起こしをしております。ニュアンスやイメージと違いがある場合は了承ください。
北海道大会公式HPはこちらから↓
https://www.dochuri.org/hokkaido_2025_portal/
大会1日目の記事はこちらから↓
https://kant-science.blogspot.com/2025/08/72.html
大会2日目の記事(開会式・文部科学省講演・生徒発表)はこちらから↓
https://kant-science.blogspot.com/2025/08/72_9.html
大会2日目の記事(分科会)はこちらから↓
https://kant-science.blogspot.com/2025/08/72_10.html
大会3日目の記事はこちらから↓
https://kant-science.blogspot.com/2025/08/72_96.html
【裏版1日目】全中理北海道大会裏珍道中記録【24年ぶりに飛行機乗るってよ(笑)】はこちらから↓
https://kant-science.blogspot.com/2025/08/blog-post_9.html
【裏版1日目】全中理北海道大会裏珍道中記録【北海道はでっかいどー】はこちらから↓
https://kant-science.blogspot.com/2025/08/blog-post_10.html
【裏版1日目】全中理北海道大会裏珍道中記録【観光名所に衝撃の事実が】はこちらから↓
https://kant-science.blogspot.com/2025/08/blog-post_27.html
【裏版1日目最終回】全中理北海道大会裏珍道中記録【青春プレーバック】
https://kant-science.blogspot.com/2025/08/blog-post_53.html
【裏版2日目】全中理北海道大会裏珍道中記録【よーく考えよう、予約は大事だよ】
https://kant-science.blogspot.com/2025/08/blog-post_0.html
【裏版3日目】全中理北海道大会裏珍道中記録【君はリストラされたサラリーマン?】
https://kant-science.blogspot.com/2025/08/blog-post_73.html
【裏版3日目最終回】全中理北海道大会裏珍道中記録【無事に生還できた男】
https://kant-science.blogspot.com/2025/08/blog-post_42.html
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