【2日目】第72回全国中学校理科教育研究会北海道大会【開会式・文部科学省講演・生徒発表】

 

【大会2日目】

○開会式

開会式では、多くの方のご挨拶後、昨日の理事会で承認された新役員の紹介や、表彰、昨年度の山梨大会の報告、大会宣言(案)などがありました。

また、昨年度の教材開発コンテストの表彰も行われました。

○文科省講演

演題「豊かな未来を切り拓く理科教育」

文部科学省 初等中等教育局 教育課程課 教科調査官 小林 一人 様

国立教育政策研究所 教育課程研究センター 研究開発部 学力調査官 神 孝幸 様

主な内容は以下の通りです。

◆現代における課題と、指導要領の関係

・社会変化への対応として、少子高齢化、グローバル化、デジタル化、生成AI進展、労働市場の流動化、マルチステージ型キャリアの定着があげられる。

 

・特にAIの進展や労働市場の流動性の高まりが指摘され、生涯学習が重要となっている。

全体主義・同調圧力・正解主義の偏りからの脱却と、多様性包摂・公正な社会の基盤形成が教育の課題である。

・「社会に開かれた教育課程」「何ができるようになるか」に基づく学びの再設計と現行の学習指導要領はなっている。

・その中で、主体的・対話的で深い学びの実現、探究の過程の重視(流れは一方向に固定せず、単元・生徒の実情に応じ柔軟運用)している。

・主体的・対話的で深い学びの実現に向けた取り組みについて、特に、何を学ぶかだけでなく、どのように学ぶかの重要である。

 

理科教育の現状と示唆

・国際到達度を見ていくと、日本は科学的リテラシーは世界トップクラスを維持。コロナ期のICT活用進展がCBT型調査とも整合がとれている。。

国際調査の設問適合性による年次変動はあるが、基礎力は堅調である。

・一方で課題として、学ぶ意義の実感・自己肯定感が国際平均より低い。「日常生活で役立つ」との認識は改善中だが、なお低位にある。

理工系進学比率がOECD下位水準(約17%)。大学側の理工系定員拡大が進行中で、裾野拡大・動機づけ強化が急務であり、早期の文理分岐と進路未定層における文系志向の固定化されている。中学生の段階から理系の魅力や有用性を具体的に示すことが必要であると考える。

指導要領改訂の重点(現行)として、科学的に探究する学習の充実や、日常生活・社会との関連重視し、単元指導計画による学習の見通し設計、探究の過程を通じた「理科の見方・考え方」の獲得を大切にしてほしい。

デジタル活用と学び

・紙かデジタルかの二分法ではなく、学習目標に応じて最適メディアを選択すること。最低限のデジタル活用スキルは必須だと考える。

・効果的な使い方として、思考の可視化・記録(入力→保存→比較→ふり返り)や画像処理・ログ活用による現象理解(等速運動の解析など)などが考えられる。

生成AIの活用については、AIとの対話活用(事前プロンプト設計を含む)で多様な視点を獲得できると考えられるが正確性などについては留意が必要である。

日本のデジタル活用力は相対的に低位であり、教育を通じた底上げが必要である。

全国学力・学習状況調査(中学校理科)CBT/IRTの導入と活用

9600校規模で実施し、CBT化により問題は一人ひとり異なるセットで実施した。内容は公開22問・非公開16問を作成している。

IRTスコアは基準500として、生徒には5段階バンドで返却する。

異なる問題でも同一物差しで能力推定し、校種・地域間の極端なばらつきは小さかった。

当年度はバンド差の質的解釈は限定的であり、次回以降の縦断で精緻化予定である。

分析からの授業示唆)

直列・並列と発熱について

中位層は「一方が直列なら、もう一方は並列」という二択で推測する傾向があり、合成抵抗の根拠理解が十分ではなく、上位層でも約2割が「合成抵抗→発熱量」への関連付けが不十分であった。

改善案として、合成抵抗の概念定着→発熱量への段階的橋渡し、説明の根拠と言語化を強化する必要がある。

課題づくり(自作課題)の低下

自ら課題を立てた経験のある生徒は全体成績・該当設問で高得点であった。

改善案として、事象との出会い設計→疑問喚起→課題への昇華を単元内に位置付ける必要がある。

呼吸の概念把握

「動く=呼吸する/動かない=しない」の誤概念がバンド13で顕著であり、バンド4以降で逆転している。

・改善案として、エネルギー獲得・生命活動の視点から「呼吸」を再定義し、観察・検証活動を行う必要がある。

ふり返り記述

無回答は下位層に集中している。文字数と正答率には正の相関関係があった。

・その中で、「自己の変容」は全バンドで書きやすく、導入に有効。次段で「新たな気づき」「生活とのつながり」へ広げることができる。

改善案として、視点や例示(骨子)を提示し、段階的に記述の質を高める必要がる。

データ利用・活用

学校配付のバンド分布と設問別傾向を突き合わせ、層別改善策を設計することも必要。

(例:バンド23への橋渡し課題、上位層の概念連結強化等)。

記述データのテキストマイニング結果を、キーワード提示や板書骨子に反映するなどすると、生徒も何を書けばよいのかわかる。

□中学校の先生方に向けて

・相対的に「主観的体験」の価値が大きくなる。自らの体験と知識を両立させてほしい。

・女子学生、女性教員の比率を増やすことが要請されている。理科はアカデミアだけではなく、社会に出てからも活躍できる要素。就職に対して、女性が活躍しているのはもちろんのこと、中学生からの理系就職への意識が大事である。

なお、これらのまとめとして、以下のサイトをぜひ見てほしいということを言われましたので、QRコードを掲載します。

1 次期学習指導要領の検討開始

●教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)
●中央教育審議会 教育課程部会 教育課程企画特別部会
●TIMSS2023の結果(概要のポイント)
●PISA2022のポイント
●「StuDX Style」( スタディーエックス スタイル)

文部科学省のWeb ページに掲載

https://www.mext.go.jp/studxstyle/

GIGA スクール構想により整備された新たな機器等を、文房具や教具と同様、

日常的に活用していくイメージを各設置者や学校現場の先生方にもっていた

だけるよう、先進的に実践を進めてこられた自治体・学校の実践事例等につ

いて情報発信中。

 

○生徒発表

 昼食時間に、科学部がある中学校の生徒が、自分たちの取り組んだ研究を発表しました。以下は発表した中学校と、発表内容です。

札幌市立柏中学校       「川の硝酸態窒素の自然循環 3年目」

札幌市立向陵中学校     「 ケミカルライトの研究2024

札幌市立屯田北中学校    3つの川の生態調査6年目」

札幌市立米里中学校     「望月寒川の生物調査12年目」

 生徒は緊張した様子もありましたが、どの研究も地域性や自分たちの疑問、10年以上も継続的に取り組んでおり、楽しく聴講することができました。広島でも同様の取り組みができれば面白いなと感じました。

*お昼の分科会へ続く

*本大会は、撮影、録音、録画が関係者以外の場面以外は不可ということだったため、記録があまり残っておりません。メモや大会誌を参考に文字起こしをしております。ニュアンスやイメージと違いがある場合は了承ください。

北海道大会公式HPはこちらから

https://www.dochuri.org/hokkaido_2025_portal/

大会1日目の記事はこちらから↓

https://kant-science.blogspot.com/2025/08/72.html

大会2日目の記事(開会式・文部科学省講演・生徒発表)はこちらから↓

https://kant-science.blogspot.com/2025/08/72_9.html

大会2日目の記事(分科会)はこちらから↓

https://kant-science.blogspot.com/2025/08/72_10.html

大会3日目の記事はこちらから↓

https://kant-science.blogspot.com/2025/08/72_96.html

【裏版1日目】全中理北海道大会裏珍道中記録【24年ぶりに飛行機乗るってよ(笑)】はこちらから↓

https://kant-science.blogspot.com/2025/08/blog-post_9.html

【裏版1日目】全中理北海道大会裏珍道中記録【北海道はでっかいどー】はこちらから↓

https://kant-science.blogspot.com/2025/08/blog-post_10.html

【裏版1日目】全中理北海道大会裏珍道中記録【観光名所に衝撃の事実が】はこちらから↓

https://kant-science.blogspot.com/2025/08/blog-post_27.html

【裏版1日目最終回】全中理北海道大会裏珍道中記録【青春プレーバック】

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